公務員の転職は難しいのか|制度上の制約と、実際に効く準備
この記事は、いま公務員として働いていて、民間企業への転職を考えている方に向けたものです。民間から公務員への転職(採用試験)については扱っていません。
「公務員の転職は難しい」という言葉は広く見かけますが、何が難しいのかは分けて考える必要があります。制度上の制約と、選考上の評価は別の問題だからです。
制度上の制約は、思われているほど多くない
まず制度面です。在職中に転職活動を行うこと自体を一律に禁止する規定は、一般にはありません。問題になるのは次の点です。
- 勤務時間中の活動:職務専念義務(国家公務員法101条/地方公務員法35条)に反する可能性があります。年次休暇を取得して対応するのが基本です
- 再就職に関する規制:国家公務員法には「再就職者による依頼等の規制」(106条の4)をはじめとする規定群があります。一定の職にあった職員には、離職後の行為について制限が課される場合があります
- 守秘義務:離職後も継続します。面接で職務上知り得た秘密に触れないよう注意が必要です
このうち、多くの職員に実務上関わるのは1点目です。3点目は面接での話し方の問題として意識しておく必要があります。
規制の対象となる職・行為・期間は、国家公務員法106条の2以下に複数の条文として置かれており、 職位によって適用が異なります。本記事では詳細に立ち入りません。 管理職の経験がある方は、所属先の人事担当または再就職等監視委員会の公表資料で必ず確認してください。
難しさの中身は「経験の翻訳」にある
制度よりも実務的な障壁になるのが、選考での評価です。よく指摘されるのは次の3点です。
1. 成果が数字で語りにくい 公務の成果は売上や利益で測られないため、職務経歴書に書いたときに評価者が読み取りにくくなります。処理件数、対象人数、削減した工数、予算規模といった定量化できる指標に置き換える必要があります。
2. 職務範囲が広く、専門性が伝わりにくい 異動が多く、一つの分野に長く留まらない人事が一般的です。このため「何ができる人か」が伝わりにくくなります。分野ではなく機能(調整、折衝、制度設計、進行管理、審査)で括り直すと伝わりやすくなります。
3. 民間の職種名と対応が取れていない 公務の職名は民間の職種名と一致しません。求人票の職種要件と自分の経験を突き合わせる作業が、そのままでは進みません。
つまり難しさの中心は、能力の不足ではなく、経験の翻訳が済んでいないことにあります。
退職の時期は退職手当と無関係ではない
退職手当は勤続年数に応じて算定されます。年度の途中で退職するか年度末まで勤めるかで、支給額が変わる場合があります。
ただし算定方法は国家公務員退職手当法と各自治体の条例で異なり、一般論では金額を出せません。所属先の人事担当に、退職時期別の試算を確認してください。この確認は、転職先の入社時期を交渉する材料にもなります。
準備の順序
- 職務経歴を機能で括り直す(分野ではなく、何をする力か)
- 定量化できる指標を洗い出す(件数・人数・工数・予算規模)
- 退職手当と退職時期の関係を人事担当に確認する
- 求人と自分の経験の対応を、第三者に見てもらう
4点目を独力でやると、多くの場合ここで止まります。公務員からの転職を専門に扱う人材紹介サービスは、この翻訳作業を前提に設計されています。
まとめ
- 在職中の転職活動を一律に禁じる規定は一般にはない。勤務時間中の活動が問題になる
- 管理職経験者は再就職規制の確認が必要
- 難しさの中心は能力ではなく経験の翻訳
- 退職時期は退職手当に影響しうる。一般論では判断せず人事担当に確認する